COVID-19ワクチン3回目 ブースター接種が児の感染予防になる可能性
今回は新型コロナウイルスワクチン接種による胎児への抗体移行の研究について紹介します。
現在、可能性が高いわけではありませんが、世界的な解釈では妊娠が新型コロナウイルス感染時の重症化リスクを高めるため、妊娠前または妊娠中のワクチン接種が推奨されています。(CDC ASRM RCOG等より)しかしワクチン接種をする時期に関しては悩ましいと思います。
オミクロン株の出現により、乳児や小さなお子さんの感染が増えていることが世界中で問題となっており、ワクチン接種の開始年齢引き下げが各国で検討されています。
そして、米国ではすでにCOVID-19ワクチン接種により臍帯血を通して妊娠中の母体から胎児への抗体移行が知られており、これを利用して出生後の新生児や乳児にも免疫を獲得させる戦略が研究されています。
ファイザーまたはモデルナのm-RNA タイプまたはJohnson&JohnsonのウイルスベクタータイプのCOVID-19ワクチン接種を受けて、妊娠34週以降で出産された1359人の患者と1374人の新生児についてのワクチン接種後の抗体について研究が行われました。
母体の抗体IgGレベルは、ワクチン接種時の在胎週数に関係なく、出産時に検出可能でした。
出産時の母体と臍帯血の抗体IgGの値は、まず新型コロナウイルス感染歴がない妊婦の検討ですが、妊娠前や妊娠初期で2回ワクチン接種を受けた場合の方が後期で2回ワクチン接種を受けた場合より低く、これは時間的要素で抗体低下が起きていると考えられます。しかし、妊娠前や妊娠初期で2回ワクチン接種を受けた場合の方後期で1回のワクチン接種を受けた場合よりも母体と臍帯血の抗体IgGの値は有意に高い結果でした。
次に新型コロナウイルス感染歴がある妊婦の検討ですが、妊娠前や妊娠初期、後期でも時期に関係なく2回接種と1回接種での母体と臍帯血の抗体IgGの値の差はありませんでした。
そして妊娠後期でのデータですが、3回目のブースター接種を受けた場合は母体および臍帯血の抗体IgGの値は妊娠後期に2回ワクチン接種を受けた群よりも有意に高い結果でした。
考察としては、ワクチンの開始のタイミングに関係なく、妊娠後期までに2回ワクチン接種を終えている場合は、出産時に新生児に高レベルの抗体を伝達できるとしています。
本検討からは、
・新型コロナウイルスワクチン接種開始のタイミングに関係なく、妊娠後期までに2回ワクチン接種を終えている場合は、出産時に新生児に高レベルの抗体を伝達できる
・妊娠後期での3回目ブースター接種により、母体と胎児はCOVID-19に対してさらなる高い抗体値(免疫)を得ることができる可能性がある
と言えると思います。
当院は新型コロナウイルスと不妊治療・妊娠の関係性などについても正しい情報を発信するよう心がけております。詳しくはお知らせ欄またはHP内の「Q&Aコーナー」をご参照ください。
・新型コロナウイルスのワクチンと妊娠について
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20210430/4027.html
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20210117/3929.html
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20210314/3996.html
・新型コロナウイルスの変異株、ワクチンの有効性について
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20210523/4043.html
・新型コロナウイルスワクチンの種類について
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20210214/3963.html
・新型コロナウイルス感染と性交渉について
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20211024/4139.html
・新型コロナウイルス感染と妊娠への影響について(各国情報のまとめ)
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20210419/4015.html
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20210106/3908.html
・新型コロナウイルス(COVID-19)感染メカニズムと生殖について
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20200516/3507.html
・妊娠中の新型コロナウイルス感染による影響について
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20200815/3660.html
・うがい薬と不妊についての関係
https://www.ivf-ibaraki.or.jp/20200805/3642.html
・紫外線による空気除菌での新型コロナウイルス対策について